カナン未来塾(いちみん)大学 
自治のあり方を学ぼう 広域合併から考える。
平成13年12月19日開催の公開学習会講演の概要


「広域合併の底にあるもの」(文責 みずすまし事務局
宮城県市町村課行政第1班 正木班長さん

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目 次

市町村を取り巻く情勢
・国の市町村合併に関する動き
・地方分権推進委員会の最終報告と骨太の方針の内容
・国の各省庁連携による市町村合併推進プランの概要

宮城県の市町村合併に対する取り組み

市町村合併のメリット,デメリット
本県における市町村合併の類型および組み合わせ
宮城県における市町村合併の動き
最後に
質疑応答

市町村を取り巻く情勢
 少子高齢化の進展や人口,特に生産年齢人口の減少がみられます。そういった状況にある中,行政ニーズは多様化,高度化してきており,それに伴って広域化してきており,広域的に対応していかなければならないというところもあります。例として,環境ごみ問題,介護系をはじめとする福祉問題があり,その他地域的な対応で取り組んでいかなければならないさまざまな諸課題がでてきています。
 それと,昨年に地方分権一括法が施行され,地方分権へと歩みが進められました。地方と国の関係が,上下の関係から対等協力の関係へと見直されてきました。それに伴い,地方公共団体では,自己決定・自己責任というものが求められてきています。
 また以前から,財政的には国も地方もかなり厳しいものになってきております。地方債現在高が約188兆円にもなっており,地方財政は危機的状況になっています。
 さらに,例えば病院事業やごみ問題,介護保険の認定など,県内のどの圏域や市町村においても広域行政を行っていますが,手続きの関係でなかなか迅速に動けないなどのように,迅速性や効率性,透明性,責任所在がともすると不明確になりがちになるなど広域行政の限界が見られるところです。
 こういった状況を背景にして,市町村合併は,今後の行政サービスを展開する上での,一つの解消策になり得るのではということで申し上げているとこです。

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国の市町村合併に関する動き
 市町村合併について国の動きがどういうようなものになっているかについてですが,
 元々は平成5年の地方分権の推進に関する決議というものに端を発しているんですが,地方分権を進めるためには,それを支える行政体として足腰の強い行政組織が必要なんじゃないかということでの始まりです。大本になる基本的なルールとして,市町村の合併の特例に関する法律というのが平成7年に成立しました。
・特例法の10年間の延長とか合併協議会に係る住民発議制度の創設
・議員定数・在任特例の拡充
・地方交付税の合併算定替の拡充など
がなされ,その後何度か改正が行われ,
・県知事の合併協議会の設置の勧告
・市となるべき要件の特例
・地方交付税の合算算定替の拡充(5年→10年)
・合併特例債の創設
など,より合併のしやすい環境をということでの措置が講じられてきているというのが国の動きです。
 さらに平成13年6月に大きな動きとして,地方分権推進委員会の最終報告がなされたり,「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」いわゆる骨太の方針が閣議決定されたりしております。

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地方分権推進委員会の最終報告と骨太の方針の内容
 地方分権推進委員会の最終報告の中に,地方公共団体の関係者,さらにはその住民に訴えておきたいこととして5点があげられています。
 第1点目は,地方公共団体の関係者の意識改革を進めて欲しい。
 第2点目は,地域住民による自己決定・自己責任の原理を貫徹していって欲しい。その際には,少なからぬ痛みを伴わざるを得ない事柄もある。
 第3点目は,国と地方の財政が危機的状況にある。国に救済を求めても国にはもはやそれに応える余裕もない。市町村における自主的な合併の推進は,有力な選択肢であることを認識して欲しい。
と財政的な観点ではありますけれど,地方分権推進委員会から報告されているところです。
 そのほか,第2次分権改革の始動に向けて地方税財源確保があげられています。
税財源の地方における充実が述べられています。
 地方公共団体の施策に実施に必要な財源の相当部分は,当該地域からの税収で賄い,財政力の弱い地域には,一般的な財源調整で対応し,個別事業に必要な国庫補助負担金は真に必要なものに限るという方向が望ましい方向であると。
また国から地方への税源委譲ということで,地方税源の充実を図っていく,その際には,税源委譲額に相当する国庫補助負担金や地方交付税の額を減額するなどにより,歳入中立を原則とすべきであるとより税収に重きをおいた歳入構造に変わるべきであると報告されています。
 また骨太の方針では,個性ある地方の競争−自立した国地方の関係の確立として書かれてあります。これまでは「均衡ある地域の発展」でしたが,「個性ある地域の発展とか知恵と工夫の競争による活性化へと」というところに視点を置いた方向転換なされています。
 自立しうる自治体を確立しなければならないと指摘し,そのため速やかな市町村の再編が必要であるとの指摘がなさせており,規模等に応じて市町村の責任を変える必要があるとの指摘があります。
また地方の自立的判断の確立の中では,受益と負担の明確化,地域に必要なサービスを住民が負担との見合いで自主的に選択し得る仕組みが,地方自治の前提であるとして,受益と負担が見えるような状態にすべきとの指摘しています。
 この,基本方針については,来年度以降行財政改革の方向性として閣議決定したもので,最初の段階としては,方針に基づき国の来年度予讃の調整がされています。

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国の各省庁連携による市町村合併支援プランの概要
 市町村合併支援プランは,市町村が合併により新しいまちづくりを行うに当たっての内閣に設置した市町村合併支援本部の支援策等をまとめたものですが,
主な施策として,
・地方財政措置の拡充ということで,補助金とか地方交付税の措置
・道路当の社会資本整備に充てる補助金の優先採択,重点投資等
・生活環境,情報技術,教育等の各分野における優先採択,重点投資等
・その他合併の障害を取り除く諸施策等(例えば市町村の数とかのように現在ある数を前提にした補助事業とか諸施策も合併後も受けられるようにする。)
こういったものを国の方では市町村合併を支援する事業としてメニュー化しています。 支援プランの対象地域は,合併重点支援地域に指定された市町村と平成17年3月までに合併した市町村となっております。

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宮城県の市町村合併に対する取り組み
 本県の取り組みといたしまして「宮城県市町村合併推進要綱」を策定いたしました。県の基本的な考え方や支援策を内容とし,また中には,県ではたたき台として,合併の組み合わせとして示したものなどの内容で平成11年度に策定いたしました。市町村が行う合併等に関する調査研究等への財政支援や公共的団体が行う合併推進に関する機運醸成に資する経費の助成を行っています。現在,合併に関する地域調査研究事業を行っていますが,「宮城県市町村合併推進要綱」で示した合併の組み合わせを対象として,合併に対する財政支援策や合併後の類似団体との比較による効率化の目安などについて,基礎的な調査を実施しています。
 実地調査として,現在各市町村で行われている合併に関する研究や協議が円滑に進められるよう,合併の課題や,合併後の地域の将来像などについて県と市町村が共同で,地域の実情を踏まえた実地調査を実施しております。

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市町村合併のメリット,デメリット
 市町村合併に対する県の基本的な考え方やその支援体制・支援対策等を明らかにするとともに,市町村や地域の住民等が市町村合併を検討する上での参考や目安となるものとしてまとめた「宮城県市町村合併推進要綱」がありますが,中身として,
・地域の一体的なまちづくりによる新たな活力と可能性の創出
・効率的な行政運営
・職員の専門性の向上と組織余力の確保
・住民サービスの充実と住民負担の軽減
・地域のイメージアップと地域の発展
・広域的行政課題の解決
となっております。
 県では特に市町村合併に関しては,それを原因とするデメリットは果たしてあるんだろうかと考えてます。懸念されるものは当然ありますが,さまざまな手法によってそれを払拭できるんではないかと言うことで,市町村合併に対する懸念への対応として,それについての指摘を「宮城県市町村合併推進要綱」にまとめてあります。
・住民の声が届きにくくなるとの懸念については,行政の説明責任を十分にはたし,住民参加の体制を整備することにより,住民の声を適切に反映することで解消できる。
・周辺地域のあり方に配慮した均衡ある発展を進めることが大切である。
・地域の伝統,特性が失われてしまうという懸念については,地域の歴史や伝統を貴重な財産として生かしたまちづくりを進めていくことが大切である。
・その他,住民負担の公平性の確保や合併市町村間における財政力等の格差,住民サービスの変化と民間団体との協働,合併の効果・メリットの顕在化についてまとめてます。

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本県における市町村合併の類型および組み合わせ
 「宮城県市町村合併推進要綱」に,本県における市町村合併の類型および組み合わせについて,基本的な県の考え方を示しております。組み合わせは地図で示しております。
(石巻市・桃生郡・牡鹿郡1市9町は,類型として中核都市想像型(中核都市創造型=地方分権時代における地域の新たな担い手としての役割,また,県土の均衡ある発展の見地から,地方中心都市,とりわけ一定以上の人口を有する中核都市を創造する。)として示されています。)

参考>
(宮城県市町村合併推進要綱等は宮城県市町村課ホームページ,宮城県の市町村合併をご覧ください。)
 http://www.pref.miyagi.jp/sichouson/gappei/index-g.htm


宮城県における市町村合併の動き
 加美郡四町では,任意の協議会ですが合併推進協議会を設立しております。委員は25人ですが,行政関係者だけでなく,区長も入っており,下部組織の部会では,議員部会,教育委員部会,農業委員部会,行政区長部会,町民部会も仕立てられています。現在事業として,住民座談会,住民意向調査,広報による情報提供などを行っており,法定協議会への移行が検討されてます。
(そのほかの状況は省略しました。)


<参考>
(なお,県内市町村合併の動きは宮城県市町村課ホームページ宮城県の市町村合併をご覧ください。)
 http://www.pref.miyagi.jp/sichouson/gappei/index-g.htm

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最後に
 参考までに,合併についての推進の立場の見解を資料に添付しました。一つは関西学院大学の小西砂千夫先生のものですが,財政難が合併促進の理由なのかという疑問に対して,「交付税の収支が均衡するような制度改革は,自治体が合併しようとしまいと断行せざるを得ません。今交付税の出口ベースの交付額は20兆円ですが,国税の5税の一定割合という入り口ベースでは12兆円程ですから,収入に合わせて支出を縛るならば,過去の借入金の返済を別にしても4割近くのカットになります。そのような強行手段が講じられたときに,市町村合併はカットされたショックを緩和するためには若干役立ちます。つまり,合併は国から見て財政難を解決する手段にはなりません。自治体が合併するしないにかかわらず,交付税の収支ギャップは取り除かなければならないのです。言うならば,合併は財政難時代の危機管理政策といえます。」と書いています。
 また,何のための合併なのでしょうかという疑問に対しては,「合併は財政的には危機管理,分権という観点から役所の能力強化と述べてきましたが,それはあくまでも組織の内向きの話であって,本当の目的はやはり「まちづくり」のための体制を整えることにあります。市町村の基本は生活行政であり,どのようにその生活行政を展開していくかという視点が大事である。」と答えています。
 合併のデメリットは克服できるのでしょうかという点では,「克服するためには,今のように我がムラから議員を出して発言力を確保するか,それとも住民参加の仕組みを新市に約束させるかの2つの方法があります。どちらかが現実的かで判断していくしかありません。ただ,合併とは関係なく,地方政治の利益誘導体質は叩き潰すしかありません。」と述べています。
 最後にこの先生の特徴は,「合併は所詮役所の統合です。」といった割り切り方をしている点です。そういった考え方をもっている方です。
 その他に,PHP総合研究所の荒川英知さんは「合併議論を団体自治の枠内にとどめず,地域社会に開かれた住民自治の問題として関連づけていくことが望ましい。議員定数の削減や職員数の抑制といった行政改革の視点ばかりでは,住民が合併問題を通じて地域運営に主体的にかかわる動機とはならないからである。住民自治を充実強化することは,理屈のうえでは合併とは関係なく実現可能である。しかし硬直化した従来型の行政運営に一石を投じ,政治参加も含めた地域社会のあり方に揺さぶりを与え,官民協働を進める契機として,市町村合併に大きな意味があると考えられる。」と指摘しています。
 国の支援は,合併特例法の期限,平成17年3月31日までとなっており,合併まで3年程度は必要であり,切羽詰った状況になってからではなく,将来を見据えた中長期展望が必要です。県としても,決して市町村合併を進めるというようなことではなく,国の支援がかなり財政的には優遇されていることですから,この機会に検討しないで見過ごしてしまう手は無いと考えています。行政関係者だけでなく,経済界,住民の各階を入れた協議の場というものを是非作って協議して欲しいと考えています。協議会というものをぜひ作って官民協働で協議していただきたい。

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質疑応答
宮城県市町村合併推進要綱の市町村合併の組み合わせの中で,石巻地方は大きな地域の合併になっていますが,どういった理由でそのようになったのでしょうか。

A
この組み合わせを示した背景には,生活圏ということで,通学通勤とか通院とか人の動きを基にした市町村の関連性がどれだけあるのか言うような客観的な数字から出したもので,産業経済とかというより,人の動きを基にしたというのが一点あります。また二点目として,地域の結びつきの意識の問題として,この地域に住んでいる住民の方々のアンケートや町長議員の方々の意識調査を実施して,結びつきの度合いを把握して,考慮に入れました。また広域行政の圏域なども考慮に入れてあります。人口20万人以上になると政令市の準じた権限を有することができるので,それらも考慮してます。なお,この組み合わせは,強制的なものではなく,参考までにまとめたものです。

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